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 ADVANTEST スペクトラムアナライザー R3261A

カテゴリー スペクトラムアナライザー
測定周波数 9KHz 〜 2.6GHz
電源電圧 100V AC
サイズ(幅×高さ×奥行): 330×177×450 mm 突起物含む
重量 15 Kg

掲載している症例と作業

1、電源が落ちた。

 電源部の修理

まず分解

後ろの足4個を外して上下の外筐を後ろにずらすとフタがはずせる。
上側の様子
この基板は6本のネジと白いハーモニカコネクタで固定されている。
左下が電源部で、ここが一番臭いので開腹することにした。
パンチングメタルを止めているネジ4本を横から外すと中が見える。
下側の中はこんな感じ。 多量のビスが有る。
アルミ素材だが光沢は無く、ヘアライン仕上げのような表面だ。
発見!

基板がこげた跡が見える。
どうやら一次側のスイッチング部のようだ。

変な匂いは基板が燃える匂いだったようだ。

民生機の業界では事故の領域だと判断され事例が多ければしかるべき機関に申告しなければならないレベルだ。計測器の場合はどうなんだろう?
電源基板の取り外し

基板の4隅にある長い6角ボルトをはずし、スイッチングTRなどの放熱板を止めているネジ2本を外すと基板が動くようになる。
しかし下側が当たってしまい取り出すことができない。
メンテナンスマニュアルを見ても他に固定しているビスは無いようだ。
結局、はりついているだけで電源部のシールドケースは基板を止めている4隅のビスがはずれればユニットがそっくり取り出せる。
(左右に見えるコネクターは全部抜かないとダメだけど。)
燃えていた部分のパターン面を見てギョッとした。
パターンのシワシワが写真でも判る。過電流で剥がれかかっているのかと思って一部を削ってみたらパターンそのものが波状になっているようだ。かといって基板から剥離している様子はない。パターンそのものが製造時から?波状になっている。細い部分も含めて全部のパターンが同じようになっている。なおパターン面だけのようでマウント面側のパターンはこうなっていない。

変圧トランスの2本のピン部分が燃えたようだ。
しかしヒューズが切れるまでの間にこれほど燃えるのはおかしい。
スイッチングTRがショートすれば燃え出す間もなくヒューズが飛ぶはずだ。
TR類が付いた放熱板をそっくり外してみると中はこんな感じ。
しっかり燃えたんだな。
ここまでの作業で半田ごてや吸取り器を当てると例の匂いがする。
そうだケミコンの液漏れだ。

ちなみにスイッチングの2SK794は生きているようだ。
整流用のブリッジや他の半導体も問題ない。
一方、基板のマウント側は燃えたススが広がっている。
かなり広範囲に電解液が流れた様子がうかがえ、そこにススが付いているようだ。

ということは漏れ出した電解液にリークして、基板表面が発熱し燃え上がった可能性がある。燃え上がると炭化によるリークが増え、スイッチングのスイングをシャントする方向で過電流の領域になったころにACヒューズが飛ぶ。
2SK794から見てドレイン電圧が下がっただけと考えれば生きているのは納得できるが過負荷の時間帯も有ったはずなので頑張ったのだろうか。
取り付け位置の向きから察すると上部にあるケミコンが怪しいので外してみた。
まあ液漏れだな。
それにしてもこんなに広がるかなと、他のケミコンも当たってみると、あちこち液漏れしている。
C12 10μF 100V × C28 680μF 25V ×
C13 220μF 50V × C32 330μF 50V  
C14 1μF 100V × C33 47μF 63V  
C18 4.7μF 100V   C34 1μF 100V  
C20 1μF 100V   C35 470μF 25V  
C22 1μF 100V   C38 470μF 10V  
C25 330μF 50V × C39 470μF 25V ×
C26 47μF 63V   C42 3300μF 10V  
C27 1μF 100V          
右端部分のケミコンも外してみると・・・ダメですね。
右下に写っているCRの足元には、まだ軟らかい電解液がたむろしている。

結局、全部のケミコンを外して交換してしまうことにした。
新しいケミコンをマウントする前に、アルコールなどで基板面をよ〜くクリーニングしなくてはパターンの腐食が進んで断線してしまう。

部品をいったん外したりしながら全ての部品の足元を綺麗にする作業がまだまだ必要だ。
燃えた場所に一番近いトランスもこげている
トランスが生きているかどうか探るため、剥がして内部を見ると発熱した形跡がない。

写真では巻き線の中央部が黒っぽく見えているが現物では銅色の光沢で、光源が上に有るため、うまく撮れていないだけ。
耐熱テープで補修しておく。
マウント面

燃えて炭化したガラエポ基板は炭化した黒い部分を全て取り去り、穴をあけておいた。
炭化部分が残ると、またリークするからね。
この2本は1次側のスイッチングで、ACを整流した電圧のスイッチングパルスがフルスイングする場所なので、このまま戻すと絶縁度合いに不安が残る。
あとでエポキシかシリコンゴムで固めてしまおう。
パターン面

穴があいた部分をエポキシで固める。
硬化後にトランスの足に合わせてピンバイスで穴を開ける。
このピンの配線パターンはマウント側のみのため、ここに何かの配線は不要。
トランスをマウントする。
燃えた部分は熱のためパターンが傷んでいるのでトランスの足にからげた細い線(ケミコンの足の切れはし)で5mm程度の延長線を出してパターンにハンダ付けをした。
全ての部品のマウントを終了。
念のためスイッチングFETは類似スペックの2SK3700に変更しておいた。

おっと温度センサーがまだ取り付けてないな。。
左に見える黄黒の先にあるセンサーをサーマルコンパウンドを塗布して中央の放熱板に固定する。

そういえばFETを交換した時は熱伝導シートだけでサーマルコンパウンドが塗ってなかった。 他の半導体も同様だったので不要なのか?
温度センサーはモールドされているタイプなので、ここだけは塗布してあった。
2次側の様子
ケミコンが放熱板に近すぎる、これではまたやられそうだ。
同じ容量・耐圧で105℃低ESRタイプのケミコンだが現在のケミコンの方が大きいかも。
組み上げてテストランをしてみる。
電源部から変な音や煙が出ないことを注視しながら他の機能に問題が無いかを確認する。
その間の時間を使ってパネルやケースを磨いておいた。
この製品のパネルやケースは掃除用の洗剤で汚れが落ちるので良かった。

約2時間のテストランで特別な発熱も無いようなので修理完了とした。
余談を・・  このような測定機は外装ケースをはがしたまま長時間の通電をしてはならない。
後部にある空冷FANは内部の風の流通を設計してあるのでケースを開けると設計どおりの冷却ができないため2次故障を誘発する。テクトロのマニュアルでは注意事項として記載が有ったと記憶しているが今回の製品ではその記述は見つからなかった。
テストランをする時には目を離さず、できれば送風しながら実施したほうが安全だ。

 


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