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 ICF-6700

カテゴリー ワールドバンドラジオ
受信周波数 530KHz-30MHz   4バ ンド
76MHz-108MHz
電波形式 AM FM  SSB
電源電圧 100V AC  9V DC
サイズ(幅×高さ×奥行): 453×184×227 mm 突起物含む
重量 5.5K g

掲載している症例と作業

1、
電源が入らない
2、上蓋がはずれる

電源が入らない


確かにACでもDCでも電源が入らない。
このモデルはタイマージャックが付いていて電源を切っているので、接触不良が無いかどうかを確認したが入らないので分解する。

後ろのキャビから取りはずす。
アンテナの付け根部分にある基板の様子。

パターンが浮いて切れている。配線材の固定にビニールテープが貼ってある。
慣れた人の足跡ではなく、相当いじってある様子で先が思いやられる。
これらの線はいったん取り外しておく。
電源トランスからの配線も、何度か切れて補修した跡がある。
電池BOXへの配線の半田付けもあぶない。
とにかく、中身を取り出してみる。
電源が入らないのは、いじり過ぎて切れてしまった配線が原因。
この当時の線材は古くなると硬くなって切れやすくなる。
しかし折り曲げを繰り返さないければ自然に切れることはない。

ボンドで固定する手法は、当時は当たり前のように利用されていた。
電源が入るようになったので点検する。

FMしか受信ができず、AMとSWはまったく無音だ。
FMでガッツリ受信しているのにSメーターが振らない。
このSメーターは逆振れ式なのでフルスケールのまま動かない。
BATTチェックはできる。
AMとSW1はカウンターの数字が低い周波数を表示している。
SW2と3は一応の表示をするが受信は出来ていない。

しかたなく本格的な診断作業を始めた。

まずSメーター部分の回路を確認。

バッテリーチェックはOKなのでメーターそのものは生きている。
ローカルの強力なFMを受信しながらSメーターを振らせる回路をあたってみる。
ICの11番ピンには受信すると電圧が下がるという正常な変化が入力されている。
ICの13番ピンには入力に追随した変化がでてこない。ほぼ0V。
念のためコンデンサーがショートしていないことを確認。
また、こういういじられた品物はブリッジが無いかどうかも確認するがIC周辺はいじった形跡がない。

AMが無音のため、IC内のAMステージを点検する。
まずAGC出力は、ほぼ0V程度なので問題はなさそうだ。
このIFは450KHzなのでSGから450KHz1KHz変調の信号を出して、後ろのステージからトレースしてみる。
ICの7番、4番ピンにSG信号を入れると受信できるが2番ピンでは全く受信しない。
2番ピンの信号をブロックする周辺部品はないのでIC内のIFアンプがNGということが解る。

どうやらIC内が局部的にこわれているようだ。
この部分はCX162というIC内部の回路なので、これを交換するしか手が無い。
CX-162を交換してAMとSWのノイズが出るようになった。IFは回復したようだが放送の受信ができない。
カウンターの表示も全体的に低い周波数を表示している。バンドによっては8MHz台の表示だ。
バンド切り替えつまみを回転してスライドスイッチの動きを確認すると、バンド切り替えスイッチがうまく切り替わらない。なんだかグズグ ズっという感触もある。

機構を分解してみたら、ギアが一部割れて無くなっていた!。
写真では見えにくいが、要はギアの山が2〜3個無い状態だ。
これではバンドスイッチが正常に切り替わらないので表示も受信も変になるわけだ。
このギア機構には回転ストッパーが有り無理には回せないはずなので、基板を剥がして戻すときにスイッチの位置と機構の位置を合わせずに締 めて、外れたままで無理に回した可能性が高い。

こういうメカ故障が最も困る。
電気部品であれば代替品もあるのだが専用の機構部品は代替がきかない。
しょうがないので180度回転して反対側のギア部分を利用することにした。



一生懸命に集中して追跡していたので
写真を撮りそこねた。
バンドスイッチの切り替え機構が回復したが、まだ受信できない。
どこか別の周波数を受信しているような感触だ。
またSGから信号を出して探ってみるとAM放送帯でも1.7MHzを受信しているようだが全体的にビートっぽいのでイメージ受信状態なの か。

ほぼ全てのトランジスターを交換されていて、どれだけいじられているか解らないので、周波数表示を見ながらAMの局発コイルを低いほうへ 動かしてみるとコアが一杯になって調整範囲に無いようなので戻しておく。

スペアナで局発の信号を見ると明らかに小さ過ぎ、スプリアスがひどい状態で発信状態とは云えない。
発信回路のバイアス位置が正常では無いと判断しシールド板をはずして点検した。

よく見るとあちこちでブリッジに見える部分がある。
トランジスターを交換して足を切ったまでは良かったが、折れ曲がって隣のランドに接触していたり、半田の盛りすぎでブリッジしていたり で、これはひどい。
周辺のパターンを確認しながら半田の修正作業をする。

発振波形は正常になり、カウンター表示も正常に近づいたが全体的にビートっぽくて受信もできていない。
さらにチェックを進めると3個のFETを交換してあるがGSDが合っていなかった。
局発信号で強引にスイッチングするミクサーと化していたわけでビートっぽかったのもうなずける。
FETは4個使用されているが1個は気がつかなかったのか交換していなかったので、ついでに交換しておいた。
このFETを正常な向きに戻してやっとスッキリ受信が出来るようになった。
いきなり完成したような写真になったがフロント側だけだ。
パネル部分まで組み上げる前に各バンドの周波数範囲やトラッキングの調整をした。
ここまで回復するまでにラジオ部基板のチェックに集中して写真を撮るのを忘れた。
最終的にリアパネルまで組み上げて完了とした。

原因の要点をまとめると・・・

電源部の配線が切れていた。
アース線の1本が違う場所に半田配線してあった。
バンド切り替えのギアの歯が欠けていた。
半田の盛り過ぎでブリッジしていたのが1箇所。
TRの足を切ったが折れ曲がって隣のランドにタッチしたまま残っていたのが1箇所。
交換したFETのGSDが合っていないのが3箇所。

これらの状況はTRを交換した後は動作するはずが無いことから、ICの不良とバンドスイッチのギアが割れてスライドが適正でないことに気 が付かずに、あるいは診断をせずにTRを一気に全て交換してみたがNGなので諦めた・・・・というところか。要するに、診断もせずにいじ り過ぎ。

結果として主原因をそっちのけで半導体を多数交換し、その作業ミスによって余計な原因を複数個所も増やしていた訳で・・・そりゃあ治せる訳が無い。
この手の人気モデルは不良品を複数使用してブロックごとに入れ替える輩が居るらしいので、場合によっては不良の塊になった品物も有り得る。
また、聞きかじりで作業スキルも無いのにトランジスターなどを交換して余計に壊してしまっている場合も有るだろう。

いつもの事だが、やみくもに部品を変えてみるというアプローチは愚の骨頂。
少々慣れているからといって、こんな基本的な作業ミスの故障原因を散らかすのは何ともミットモナイ。
ちゃんと原因を特定するまでは余計な事をせずに冷静に観察することが鉄則であり最も復旧が速い。


上蓋がはずれる


上フタの蝶番がダメになりフタが外れてしまう。
ここにはバネが効いていて、バタンと閉まらないようになっていたはずなのだがバネが無いようだ。
分解して良く見たら下図の部品のバネ軸が折れて無くなっていた。軸の破片やバネは内部に見当たらない。


左図の変な形をしたプラスチック部品で、フタの蝶番になっている。
小さなバネをかける軸が有ったはずだが、その軸が折れている。

しかたないので、2mmのビスを埋め込んで、金属のスリーブをかぶせて埋め込んだビスとスリーブをエポキシで固定してバネ軸を形成した。

バネは手持ちの中から合いそうなものをチョイスしたが、ちょっと弱いようでフタの反発力が足りない。
他に合いそうなバネが手元に無いのでこのまま取 り付けることにした。









取り付けが正しければフタが外れることは無くバネ圧が効かないだけのはずで、軸の破片やバネも内部に転がっていないということは、以前に気が付いていて治せないので適当に戻しただけだったのだろう。

この部品は正常な時には取り付けの手順が有り、製造組み立て時に1度しか使用しない成型部を使用するようになっているので、もしかしたら外 さなくて良い物を外してしまって戻す作業中に、その成型部を使用しなったためバネ軸を折ってしまったという可能性がある。


調整資料






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