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 ICOM IC-1271

カテゴリー オールモードトランシーバー
送信周波数 1200MHz帯
受信周波数 1200MHz帯
電波形式 FM SSB CW
電源電圧 13.8V DC (内臓電源は未装備)
電源電流 受信時  1.5A 送信時 最大6.5A
サイズ(幅×高さ×奥行): 303×127×348 mm 突起物含む
重量  7.1Kg (内臓電源含まず)

掲載している症例と作業

1、周波数表示しない

2、レピーターが反応しない
3、出力パワーがだんだん下がってくる


周波数表示しない


【症状の観察】

・周波数表示部分が出ない(光っていない)→表示されているのはFMの文字とメモリーch部分だけで、USBやLSBを選択するとFMは消えるがFMに切り替えるとまた表示する。メモリーchはch番号を選択するとちゃんと表示されている。
・受信音は出ている。→FMもSSBも切り替えればちゃんとそのモードの音が出ているし、RFゲインのVRも利いている。
・送信も出来ていてパワーも出ている。パワー調整も利いている。
・RAMバックアップ電池電圧は適正→3.2Vあるのだが、ついでなので2032をリード+ダイオードを付けたソケットに入れてメモリーICの足に直接接続しておいた。つまり作業の振動などによる瞬断防止に2個パラ式にしておく予定。

【サービスポジション】

コントロールユニットとPLLユニット
開いているのがPLLユニットで手前で立っているのがコントロールユニット


フロントユニットと表示ユニット
前面パネルを前に倒してある。写真右下に見えるのが表示ユニット(表示管のちょうど後ろにある)


表示ユニットのパターン面(本体の右面を下にして立てて撮影している)
表示管はフロントユニットで挟まれているため、表示ユニット基板はこれ以上開けない。
表示部を一式で取り出すためにはフロントユニットの固定ビスをすべて外して起こさなければ表示管は取り出せない。



【診断】

RAMはたぶん大丈夫だと思うが部分的なデータ抜けは有り得ることなので原因想定としては除外しない。
PLLのアンロックで表示をマスクする機器もあるようだが、この製品はそうではなさそうで少なくとも光らない状態になることは考え難い。
音が出ることからPLLアンロックによるミュートは解除されているのでPLLはロックしているようだ。念のためVCを確認し、MHzボタンを押すと追随して変化している。

表示回路のIC1,2に来ているCTLとデータ信号はメインダイヤルを回転させると送り込まれてきている。
リセットパルスも正常に見える。ちなみにRAMユニットを外した状態でも表示の症状は変わらない。
表示の症状から、IC2のダイナミック点灯は動作をしているがIC1の周波数表示をする側がダイナミックな動作をしていない様子がうかがえる。
この動作停止はICそのものが不良なのかコントロールされて停止又はエラー状態なのか判断できない。
CTL信号を詳しく見ると立ち上がりがなまっているが立下りは直角だ。データストローブは立下りで行うと思うので、たぶん問題ないだろう。
データ信号は、Hのレベルがやや右下がりで綺麗ではないが、まあ大丈夫だろう。

【作業方針】
今のところ表示不良については表示IC1の単品不良が疑われるが、ロジック的な表示停止の可能性を追って回路図と回路解説から読み取る限りではダイナミック点灯表示を静止させるロジックは見当たらないので、ここはひとつアマチュア的な手法でやってみることにする。
それは表示ICの1と2を入れ替えて症状が逆になればIC1の単品不良が決定的になり原因の切り分けになる。
ついでにメーター照明を白色LEDに変更する。

【作業】
表示基板のIC1とIC2を入れ替える。
結果はGood。想像どおり症状が入れ替わり周波数の表示とモード表示ができるようになった。メモリーチャンネルは表示されないが周波数を見れば良い訳で、
この状態ならばまあ暫定処置としては許せる範囲だ。

メーター照明を白色LEDに変更したがメーター自身の色が黄色っぽいのでランプとあまり差がないように見える。

【暫定調整】
このままで他の機能に問題がないかを確認し点検調整を行うこととする。

受信感度は1295以上で低下していたので再調整をおこない問題ないレベルまで回復。
Sメーターは、FMでは振れすぎSSBでは振れなすぎたのでSGを基準にして再調整。
周波数ずれが3KHz程度あったのでこれもSGに合わせて調整しておいた。
送信パワーも1292以上で70%まで低下していたので再調整を行い1299までは10Wを維持するように回復。
ここまでの処置により、とりあえずのオペレーションには問題なく動作できるようになった。

【恒久対策】
表示用IC1の不良が判断できた。すでにこのICはメーカーなどの通常ルートでは入手が困難だが、その後ICが入手できたので表示部の復旧をした。
結果として表示ICの単独不良だった訳で、RAM問題が先入観にあって変に気にしすぎたことは反省だ。



レピーターが反応しない


マイナスシフトおよびトーンをONにしてもレピーターが反応しない症状で、トーンの周波数を確認すると88.5Hzになっていない状態。
この製品はトーン周波数を何種類も切り替えができるようになっていて、その管理は有名なS7116Aで行っている。
88.5Hzのときはコントロールポートを000100にセットしなければならないが、なぜか000110になっていて151.4Hzが出力されている。


回路を確認する


下のCPUにある出力ポートPA0〜PA5によってIC19(S7116A)が動作する。
なぜか000110になっているのはCPUの37P(PA4)にHが出っ放しの状態で、トーン周波数設定番号を88.5に切り替えても151.4Hzが出てしまう。

CPUの出力ポートがHに張り付くのは珍しいが、他のポートは設定番号に従って追随していることからCPUの不良と判断する。

CPUの入手は望めないので、やむなく37Pを浮かして88.5Hzを優先し、一部のトーン周波数は使用しない状態にした。

オプションのトーンエンコーダーUT-15は追加されておらず、オペレーション的に88.5Hzしか使用しない事およびレピーターの反応を確認しこの処置で完了とした。
















出力パワーがだんだん下がってくる


送信を続けて温まってくると出力が低下する。
パワーモジュールの劣化などでも生じる現象だが、この事例ではFANが回らないために生じた現象だった。

Fan駆動の回路は下図のとおり。


通常は電源を入れただけでC107でキックされた後はR39を通じた少量の電力でゆっくり静かに回転を始めていて、送信するとQ6がONして7V程度が供給され高速回転になる。

Fanモーターが弱ってくるとC107のキックと少量の電圧では始動できなくなるため、Fanが停止したままになる。その状態から送信して7Vが供給されても始動しないためファイナル部の温度はどんどん上昇してしまいパワー低下になったと思われる。

同じFanは入手できそうもないのでC107交換とR41に100Ωをパラ付することでキックし易くなり電源Onでそこそこ回転することで内蔵電源の排熱にもなり、送信時にはしっかり回るようにした。

送信すると回転音(風切り音)は聞こえるがさほど気になるほどではなく、ボディーが大きくFanも大きいためIC-706MK2Gよりは静かに感じる。









調整資料

ページ数が多いので省略


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