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 Icom IC-551

カテゴリー 50Mhz帯トランシーバー
送信周波数 50MHz〜54MHz
受信周波数 50MHz〜54MHz
電波形式 SSB/CW/AM/FM (FMはオプション)
出力 公称10W
アンテナインピーダンス 50Ω
電源電圧 100V AC 13.8V DC
消費電流 最大3.3A DC
サイズ(幅×高さ×奥行): 111×241×311 mm 突起物含む
重量 6.1 Kg

掲載している症例と作業

1、AC電源で動作しない
2、時々イニシャライズに失敗する


AC電源が動作しない


症状1:DC電源では動作するがAC電源では動作しない。
症状2:全体的に受信感度が悪い(-67dBmでS4くらい)

まず電源部の構造を確認する。

特殊な仕組みはなく一般的なPWM安定回路の部類だ。
回路図の左側には100V整流系とトランス式14V系の2系統あり、トランス側はメモリースイッチONすると常時通電する。
電源スイッチを入れるとフォトレジスター(IC1)とC11によってQ1をキックすることで一時的に2次側発振回路の電源としてスタートさせている。
あとは2次側が変圧出力した13.8V電源を自分の電源にして電圧制御をするループ動作に引き渡される。
動作しないということは1次側の電源さえ供給されていれば、キックできていない、発振しない、変圧されないのいずれかを点検すればよい。

本体の下側を開くと下図のようになっている。
奥に見えるアルミの整形物が電源ユニットだ。黄色く見えるのは鉄板でPBTを追加する場所。
その鉄板を外すと右図のようにFMユニットが見える。VOXユニットは追加していない。
 

下図は電源ユニットを取り出して開いてみたところ。
右側が1次側の基板で左側がアルミケースに収まっている2次側基板だ。


まず1次側の基板にあるキック回路の確認をする。
このユニットのアースラインはシャーシ結合になっている。取り外したらワニ口クリップなどで接続が必要なので分解中のテストでは注意が必要だ。
(蛇足だが、1次側の100V整流系はマイナス側も浮かせてあるのでシャーシに接続してはならない。)

なにやらトランジスタが付いている。なぜだか不明だが、どうやらメモリー電源供給のD4の代わりに付けてあるようだ。
これは外してオリジナルどおりにD4の位置に手持ちの10E2を付加した。
見たついでにキック用のC11を交換しQ1のコレクターに14Vがキックされていることを確認。


次に発振回路とドライブを確認する。
先に出力の13.8V端子を確認すると2.5Vくらいしか出ていない。しかし1Vでも出ているということは発振している事になるため変圧回路を確認する。
オシロでQ2のコレクターを観測するとキックと共にフルスイングするが、出力が2.5V程度しか出ないため発振が停止するようだ。
すなわち変圧トランスL4がうまく動作できていないようで、このシリーズで過去事例でも見かける共振コンデンサーC10の劣化の可能性が大きい。
C10は2次側基板の中央に見える(トランスの右)緑色の部品で400V耐圧の0.47µFだ。


C10を同じ0.47µF450Vに交換。
こういうモールド部品は足曲げのストレスで付け根が割れやすいのでしっかりフォームしておく。


新しいコンデンサーは厚みがあるので駆動トランジスタの固定ビスの止め方向を逆にしてスペースを確保。
このビスの向きを入れ替えようと外したところ2個づつ有るはずの片方のスペーサーが1個しか無いことが判った。よくスパークしなかったもんだ。
手持ちのスペーサー(下図で白い輪の絶縁部品)を入れて組み立てる。


元通りに組み立て
ビスを逆向きにしたのでスペースは確保されている


サーマルコンパウンドを塗りなおして・・・・


これでAC電源から13.8Vが安定して供給されるようになった。
あまり使用されていなかったので充分にエージングをしておく。
その時間を利用して周波数偏差やRFからIF経路の同調コイル関係を全て調整する。


その他
周波数調整、IF周辺も含め全体的な調整を行って完了。


時々イニシャライズに失敗する


このシリーズ特有の症状で、メモリーしていない状態から電源を入れると変な表示になり正常動作をしなくなる時がある。
この症状は取り説にも記載があり、電源を入れなおせば正常になり後はメモリースイッチをONにして電源を供給しておけば本機をON/OFFしても発生しない。
ACやDCの供給を毎日OFFしたい場合は何か手を打って改善したくなる。


リセット回路を見てみると下図(左)のような簡単な回路だ。下図(右)はメモリー電源との関係。



リセットが掛かりにくい場合はケミコン(C7、C18、C22、C30)の劣化が考えられるのでコントロール回路を開く。(写真では左側が前面)
PLLユニットを外してケーブルを抜いたりしないとここまで開けない。


さらにCPUが載っている基板を裏返して作業する。


リセット部のケミコンを交換して改善したが、もともと簡単なリセット回路なので、この回路のままではおそらく完治はしないだろう。
ちなみにIC-251やIC-351も類似の回路で、いずれにも発生傾向がある症状だ。



調整資料










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