TRIO TR-9300
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カテゴリー |
50MHzトランシーバー |
送信周波数 |
50MHz〜54MHz |
受信周波数 |
50MHz〜54MHz |
電波形式 |
FM AM SSB CW |
出力 |
最大10W |
アンテナインピーダンス |
50Ω |
電源電圧 |
13.8V DC |
消費電流 |
受信時: 0.7A 送信時最大 3.0A
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サイズ(幅×高さ×奥行): |
175×68×260 mm 突起物含む |
重量 |
2.4 Kg |
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掲載している症例と作業
1、周波数桁上がり時のみ安定するまで数秒かかる
2、総合点検整備
周波数の桁上がり時のみ安定するまで数秒かかる
症状確認
どういう症状かと云うと、例えば2999から3000に上がる時に表示は切り替わるが実際の周波数が3000に安定するまでに数秒を要するというめずらしい症状だ。
100Hzの桁は、DAコンバーターから得られたDCをVXOに印加することで周波数を刻んでいるが、桁が上がる時にはその変化量が大きいため安定までの時間遅れが顕著に現れている。
VXOへの印加電圧(HCV)を観測すると一瞬3.5V程度になり数秒かけて3.0V付近まで低下している。
印加されたDCが何処かに吸い込まれているか又はDAコンバーターに供給しているVCCの供給能力が低下したか、いずれかの場合に起こりうる。
構造確認
コントロールユニットのQ10がDAコンバーターで、出力は13番コネクターのHCV(赤矢印)の経路だ。
Q10の出力を安定させるには16PのVCCが5.0Vで安定している必要がある。
Q10の16P電圧が4.5V程度に下がっていて周波数を動かすと不安定であったが供給元の5.0Vは変化していないことから16P周辺を点検する。(回路図赤枠内)
その結果、R48が1KΩのところに10KΩがマウントされていた。回路図どおりに1KΩに交換し、ついでにC12も交換しておいた。
この処置により桁上がり時の不安定症状はなくなった。
製造時にミスマウントされていた可能性が高いが今まで発覚せずに来たのは症状の変化がユックリであるため気が付かなかったのかSSBやCWを使用しなかったために症状に遭遇しなかったものと思われる。
桁上がり時でも瞬時に100Hz差で安定するようVXOを再調整する。
ちなみに、この方式での100Hz単位の周波数変化量は必ずしも100Hz丁度ごとに刻まれる訳ではない。
それは論理的なDAコンバーターの出力電圧と、それに対するバリキャップの直線性と発振回路の対容量直線性を完全に追い込んだ回路ではないためだ。
しかしその誤差は累積するものではなく10Khz単位でノコギリ波状にリセットされるので10Khz単位ではPLLによりロックされる。
そうしたこの回路の特性を意識した上で過剰な追い込み調整をせず、桁上がり時のなめらかな接続を目指した調整を行うのがよいと思われる。
その他、周波数偏差など全体調整を行い作業完了。
全体的な点検と整備
特に不具合はなさそうだが、メーター照明が暗いのでLED化する。
金属部分のサビはでていないようだ。
まずクリーニングをするため前面パネルを外す。
3箇所にLEDがネジ止めされているので、それを外して各つまみと共に洗剤で水洗いをする。
照明をLEDに変更するためメーター部を取り出して分解する。TR-9000や9500と同じ方法だ。
白色LEDを向かい合わせに2本を直列使用する。 メンディングテープで覆い、点灯テストをする。
電流制限抵抗はTR-9000や9500と同じ5.6KΩを追加する。 ちょうど良い明るさになったことを確認。
次に回路部分の点検をする。
上側のPLL、キャリア、ドライブ基板の全体的な調整を行う。 下側のIF系基板も点検調整。
コントロール部もいったん外して確認する。
この製品は2SC460が無いので電源系のケミコン交換と全体調整をするだけで問題なさそうだ。
周波数調整がクリティカルで、安定しにくいので充分なエージングをしながら調整して様子を見るという繰り返し。
その合間にマイクやカールコードのクリーニングもやっておく。
全体的な調整を済ませて整備を完了。